1998年4月23日。ちょうど僕が社会人になった頃に出版された村上春樹の「辺境・近境」。この中に”讃岐・超ディープうどん紀行”という章があります。調べてみると”讃岐うどんブーム”はそれ以前からあったようですが、群馬県に生まれ育った僕が讃岐うどんの存在や讃岐うどん巡りというレジャー(”うどんツーリズム”と言ってもいいのかな)を知るきっかけになったのは間違いなくこの村上さんの「辺境・近境」でした ただ「辺境・近境」は村上さんがそれまで複数の雑誌に寄せた文章を再編集して一つの本にまとめたもので、もともとの”讃岐・超ディープうどん紀行”の文章自体は91年3月に「ハイファッション」という雑誌に掲載されたもののようです。そういう訳で、実質的にこの本は讃岐うどんブームのかなり初期の段階で書かれていたといっても良さそうな気がする ”讃岐・超ディープうどん紀行”の中では5軒のうどん屋が取り上げられていますが、そのどれもがそれぞれにかなり個性的。田んぼの中に掘っ立て小屋が建っていてそこでうどんを食べさせている、とか、店主に「ネギがない」と文句を言ったら「裏の畑から勝手に取ってこい」と言われた、といったエピソードなどはそれまで僕がうどんに対して抱いていたイメージ(うどんに対するイメージなど普段は意識せず日々を過ごしていますが・・)とは程遠い世界感であり、衝撃的でした。それ以来、この野趣あふれる”讃岐うどん”カルチャーに大変興味を持っていて、いつか香川県を訪問してうどんを食べてみたい、とずっと思っていました そんな「辺境・近境」が出版されてから約20年。ようやく香川県を訪問する機会を得ていくつかのうどん屋でうどんを食べてきました。「辺境・近境」で取り上げられたうどん屋のほとんどは丸亀方面にありますが、今回僕たちは丸亀まで足を延ばす時間もなく高松のうどん屋に出かけました。訪問したのは全部で5軒。そこで食べたうどんの数々は、讃岐うどんらしい共通点を持ちながらもそれぞれに個性的で、”カレーうどん”や”カルボナーラ風うどん”など想像した以上に多様なうどん文化が花開いており、また県民のみなさんに普通に受け入れられている、ということも思い知らされました。僕らが東京で食べるチェーン店の”丸亀うどん”は、確かに讃岐うどんの1種であることには違いないけれど、それで全ての讃岐うどんを代表するには少し窮屈すぎるのではないか、と・・ 今回は、そんな讃岐うどん巡りのレポートです ------------------------------------------ 最初のうどん屋はこちら。高松に住むカブちゃんの大学時代の友達(Rちゃん)にも久々に会う予定を入れていて、そのRちゃんの運転で連れてきてもらいました。車がないと少し不便だったので大変ありがたかった あづまうどん 香川県高松市前田東町340-1 087-847-6111 僕がそれまでイメージしていた讃岐うどんに非常に近いイメージの店です。四国に初上陸して食べる”初うどん”にこの店に来られたことはとても幸い 時刻はちょうど昼時で、店についた時にはすでに行列ができていました Rちゃんの後ろについてカブちゃんと2人、見よう見まねで列に並ぶ 僕の人生で初となる本場のうどんがこれ まず、見た目がとても美しいです。でも、何だか周りの雰囲気にのまれてしまい気持ちも落ち着かないまま慌ててズルズルと食べたのではっきりとした味の記憶がないのですが、想像していたよりもコシは柔らかめでとてもしなやか。東京で食べていた讃岐うどんのあのコシのしっかりとしたうどんは果たして本当の讃岐うどんだったのか?という疑問が初めて沸き起こる。まさかこんな感情を持つだろうことは想像できませんでした。やはりその場に実際に出かけて体験をしてみないと判らないこともある ダシはとても優しい味わいで、僕は全て飲み干してしまいました。HPによれば「京都から取り寄せた煮干しと削り節、北海道産の利尻昆布で出汁を毎朝とります」とあります。確かに自然な味わいで、飲み干しても全然塩辛さもない 「こっちでは普通」というRちゃんの言葉に「マジかよ・・」と思いつつ、Rちゃんを見習って選んだ丸ごと1本を揚げた巨大なチクワの天ぷら。この1本揚げのチクワの天ぷらは、その後ほとんどのうどん屋で目にすることになります。それと、玉子の天ぷらもだいたいどこにも置いてありました これもまた意外な発見で、てっきりみんな純粋にうどんだけを食べに来ているのかと思いきや、地元の人を見ているとうどんのみならず付け合わせのトッピングとして複数の天ぷらやおにぎりなどをたくさんお盆に乗せていました。確かに我々のように旅行者であればうどんだけでも良いかも知れませんが、昼にうどんだけでは晩ごはんまでにお腹が空いてしまいそうです。このことは、それだけ地元ではうどんが日常食として食べられているということの裏返しなのかも知れません ちなみに、意外とチクワは軽い食感でサクサク食べられました。これならこれから訪問する店で出てきても大丈夫そうだと一安心 手打ちうどん 鶴丸 香川県高松市古馬場町9-34 087-821-3780 これが名物のカレーうどん。ダシの味わいがしっかりとあり、旨味を感じさせるうどんでした。讃岐うどんのイメージとは程遠いのですが、これも讃岐うどんの一つの姿であることは間違いない カブちゃんはあっさりと「ぶっかけ」を注文。旨みがあってしっかりとした味のダシがかかっています。このうどんは個人的には結構好みでした なお、店についた時には前に10人ほど並んでいて約20分ほど待つことになった訳ですが、途中、自転車に乗った地元の小学生と思しきぼっちゃんが「うどんでこんなに並ぶなんてクソやろ!」と叫びながら店の前を通り過ぎていきました・・ 「観光客でごめんな!」と内心思いつつ、それでも時間に制約のある旅行者の僕たちは並び続けるしかなく。。 さか枝 香川県高松市番町5-2-23 087-834-6291 画面中央やや左に写っているタンクにはダシが入っていて、自分で蛇口をひねってチャーッとうどんに汁をかける ここでもチクワと玉子の天ぷらをチョイス。加えて、僕が好きなかき揚げも追加 高松ではかなりの有名店ですが、朝早起きして出かければそれほど混んでいない店内でゆっくりと味わうことができそうです 手打十段 うどんバカ一代 香川県高松市多賀町1-6-7 087-862-4705 場所が少し離れていたので、瓦町でレンタル自転車を借りて出かけてきました そして僕がポイントだと思ったのが、提供される玉子の温度。たぶん冷蔵庫から出したばかりの冷たい玉子ではいくらアツアツの麺の上に乗せて混ぜたとしてもうまく半熟感が出ないと思うのです。同じことは日清チキンラーメンについても言えると思う。冷たい玉子を麺に乗せ、お湯をかけて3分待ったところでなかなかガッキーのCMのあの「しろたま」感は出ないはず 麺を食べ終わったあとの器の底に残った半熟感のある玉子を見て「よく計算されているな」と思いました(そんやヤツが他にいるのか分かりませんが・・) 竹清 本店 香川県高松市亀岡町2-23 087-834-7296 この旅最後となったのが竹清。バカ一代から自転車で移動、店に到着したのは10時30分ごろ。10時45分の開店にあたり僕たちの前には1家族が待っているだけでした ここでもセルフの”うどん温め器”は置いてありました この日がとても暑かったのと、それまで温かいかけうどんばかり食べてきたこともあって、冷たいダシをかけるかけうどんを頂きました 竹清のうどんを食べて気づくのは、まずその麺の細さ。それが良いとか悪いとかということではなく、他のところに比べると明らかに麺が細いです。個人的には太麺の方が好みですが、細くてもしなやかなコシはしっかりと感じられる そして注文をとってから茹でるうどん、注文をとってから揚げる天ぷら。この出来立てホヤホヤ感とライブ感は他の店よりも感じることができました ※ここまで来ると巨大チクワにも慣れてきて手慣れた調子でトングで掴む僕たち 以上でうどんツーリズムはお終いです 十分にうどんを堪能することができましたが、もし一つやり残したことがあるとすればそれはうどんの原料となる小麦粉の調査でしょうか。村上春樹の「辺境・近境」を読むと「現在讃岐うどんに使われている小麦粉はオーストラリア産のASW(オーストラリア・スタンダード・ホワイト)という品種である」とあります。本当に僕らがいま食べているうどんに使われているのがこのASWと呼ばれる小麦粉なのかどうか、できれば知りたいことの一つでした・・ こうして書いているうちにまた高松のうどんを食べたくなってきてしまった・・ いつの日か、次回は丸亀方面に出かけて”中村うどん”とか”がもううどん”とか、行ってみたいなと思います 人気ブログランキングに挑戦中。ポチッと応援よろしくお願いします!
by arusanchi2
| 2017-08-25 06:00
| 和食
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